【スタッフ日記】サワラ

皆様こんにちは、安ちゃんです。

暑い暑いと思っていましたが、気づけば秋が近づいて来ていますね。

秋といえば私にとっては食欲の秋。

そして秋になると魚たちも冬に備えて脂を蓄えるためにワタクシと同様に食欲の秋となり、コンディションの良い魚たちが釣れる季節です。

今日の主役は鰆(サワラ)。 魚編に春と書くの来ますが、東京ではサワラの旬は秋から冬です。
70センチ以下は『サゴシ』と呼ばれますが、釣り人が狙うのはそれ以上大きいサワラです。
8月中旬から9月頃になると、東京湾でサワラが海面を跳ね始めます。海中から表層にいる小魚を目指して突き上げるために、勢い余って水上に出てしまうのでしょう。
サワラは移動がとても速いので、待ち伏せしていても釣れません。東京湾を東西南北走り回って跳ねるサワラを探す釣りです。

今回は、後輩がチャーターしたボートに便乗して出船です。小さいボートのほうが機動力があって魚を見つけやすいのです。

横浜のビル群を横目にしながら海面に目を凝らします。

サワラの歯はノコギリのように鋭いので、ルアーを食っても簡単に切られてしまいます。

魚を必死で追いかけ、気づけば夜の真っ暗な海になっていました。。。
そして、この日は幸運なことに沢山のサワラを釣ることが出来ました。
餌を沢山食べてムッチムチのボディです。美味しそう!

1匹2万円ともいわれる一本釣りのサワラ、血抜きや神経抜きを施せば、価値はうなぎ登りです。

ワタクシが思うに、魚を美味しく食べることに一番情熱をかけているのは釣り人だと思います。
魚を獲るところから口にするまでの一連の流れに関わるからです。

因みにワタクシの魚を美味しく頂くまでのコダワリは、いかに旨味成分を引き出すかです。
魚の旨味はグルタミン酸とイノシン酸です。魚肉には元々グルタミン酸は含まれているもののイノシン酸は、死後に生成されます。いかにイノシン酸を極限まで増やすかが、美味しく食べる鍵なのです。

ワタクシのルーティーンは下記のとおりです。

① 魚がかかったら綱引きせずに出来るだけ速やかに引き寄せる。魚が疲れると、うまみ成分のイノシン酸生成の元となる成分(アデノシン3シン酸)を使ってしまうため、出来るだけ魚が釣られていることに気づく前に取り込んでしまいます。つまり暴れていない魚は、沢山のうまみ成分を作り出すポテンシャルを持っていますが、疲労した魚は、すでに美味しくなる要素が無くなってしまっているという事なのです。定置網や延縄で捕まえた魚と一本釣りの魚の価値が違うのはコレが根拠です。

② 魚を船に上げたら暴れさせずに間髪入れずに脳にナイフを刺して(可哀想ですが美味しく頂くために)〆ます。船上で暴れると毛細血管に血が回ってしまい、身が赤みを帯びで血生臭くなってしまいます。脳死状態の魚体はもう暴れることはありません。

③ エラの膜を切り、背骨の動脈に傷を付けて海水に漬けて血抜きをします。この時、まだ心臓は動いていますので、ポンプの役割を果たして血液を外に出してくれます。また、海水氷漬けたまま放置すると、すぐに血液が凝固して血が出なくなりますので、魚体を少し振りながら血を抜きます。

④ 血がすっかり抜けたら、背骨の神経に針金を通して脊髄の神経を壊します。これは、脳から全身への死後硬直の伝達を遅らせる為です。死後硬直が終わると魚体は腐敗に向かっていきますが、その過程でイノシン酸が生成されるので、死後硬直を少しでも遅らせたいのです。

⑤ 氷に海水を入れたクーラーに漬けて魚の体温を急激に下げ鮮度を保ちます。塩分濃度が影響して、普通の0℃で凍る氷水よりも低いマイナス1℃位の水になります。

⑥ 魚体が冷えたら水を抜き、氷だけが入ったクーラーボックスで保存します。ただしこの時に氷が直接魚体に触れると、その部分が氷焼けを起こしてしまうので、新聞紙などにくるんで直接氷と魚体が触れないようにします。 この準備が出来たら帰宅です。

⑦ 疲労困憊して帰宅してもオチオチ休んではいられません。すぐに魚を解体して下処理をします。 魚を熟成させる場合には、この段階で、九州の津本さんという方が編み出した『究極の血抜き』という手法で、ホースでエラ蓋から水圧をかけて毛細血管内の血もすべて抜きます。ワタクシも津本さんから専用器具を購入して実践しています。

⑧ 切り身にした魚肉は、魚体から出る水分で傷まないようにペーパーをしっかり巻いてラップをしてからチルドで保存します。ワタクシの場合は弱真空パックにして保存します。
ここまでやって初めてイノシン酸が生成され始め、旨味をどんどん蓄積して熟成を楽しめます。
ワタクシの私見では、お刺身で食べるには熟成4日目が一番美味しい思っています。
もちろん血抜きなど一連の処理を怠って魚を保存すると単に腐敗に向かうだけですので要注意です。

⑨ 毎晩、キッチンペーパーを交換します。ワタクシ流には、キッチンペーパーの周りに吸水フィルムを巻いておきますので、2~3日はそのまま保存出来ます。
熟成したお魚は、刺身でも煮つけでも焼きでもとても美味しくなります。

サワラは皮が美味しいので、必ず皮つきで炙って食べます。

そして西京焼きの下ごしらえ、最強味噌に漬け込んだら真空パックで冷凍保存します。半年後でも美味しく食べることが出来ます。

後日、一緒に釣りに行った後輩から上の写真が送られてきました。
スーパーでサワラを見つけたとのこと。切り身2切れで1300円強。驚きのお値段です。
サワラ釣りは大変な釣りですが、色々な意味で満足度の高い釣りです!!

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